第2回大会「歌詞が天才な楽曲」佳作 OJI-Ⅲ型様

Silent Siren『Routine』
OJI-Ⅲ型様

 

「ごく平凡。かつ、欲張りな朝でした。」という歌いだしから入るこの曲は、当時高校生だった自分にひどく衝撃を与えた。可愛いルックスのガールズバンドだし可愛い曲なんだろうななんて予想していたものだったから余計に衝撃的で遅刻ギリギリだった僕の自転車の足を止めるほどだった。「なんのために高校通って、大学に行って、大人になるんだろう。」なんてことを常日頃考えてた当時の僕はこの曲に救いを求めたのだろう。「もしかしたらこの曲は僕に学校に行かなくていい理由を教えてくれるかもしれない。」そんな淡い期待を込めて、近くの公園のベンチでこの曲を遅刻寸前にも関わらず黙って聞いたことをよく覚えている。

結果から言うと、この曲も僕と同じで当たり前とされていることに対して「どうして?」と嘆いている曲だった。落胆した。それとともに、僕の遅刻は確定した。「高田は遅刻が多すぎ、将来響くぞ。少しは努力しろ。」何万回も聞いたようなセリフを嫌いな教師から言われた。好き勝手言われてるだけなのが気に食わなくて「僕あなたのこと好きじゃないんであなたの言葉聞く気にならないですよ。」とか余計な言葉を吐いて火に油を注いだりもした。「なんでこんなことしてんだろうなあ。」なんて思いながら帰路をたどりながら不意に朝聞いたこの曲のこと思い出した。もう一回聞いたらなんか得られるかなとか思って聴いたけど、やっぱり大したことは言ってなかった。はっきり言って僕と同じですごくひねくれていて、でも少し共感できて。気になって誰がこんな歌詞書いたのだろうと調べてみた。するとどうやらこの曲の作詞はこのバンドのボーカルの子が担当しているらしいということを知った。驚いた。笑った。あんなかわいい顔してキラキラしていても俺と同じようなこと考えるんだなって少し安堵というか、やっぱり人間みんなそんなもんなんだなって思った。今朝怒った教師も「なんでこんなやつにこんなこと言わなきゃいけないんかな」とか思ってるかもしれないなって思ったらなんだか急に申し訳なくなってきた。この曲を聴いて、作詞した人を知って、歌詞を見て、笑って。みんな何かしら悩んで生きてんのかなって思ってすこしだけ見方が変わった。

よくあるメッセージ制のある歌詞でもなければ、ストーリー系でもないけど僕はこの歌詞が好きだ。一人の女の子が自分の悩みを訴えているようなこの歌詞が、私はここにいると叫んでいるようなこの歌詞が好きだ。この曲をだれかに聴いて貰いたいとか、聴いて何かを感じてほしいとは思わない。けれども、どこにでもいるごく普通の悩める高校生が少しだけ前を向くきっかけになったこの曲をこの感想文を読んで興味をもってくれるのなら当時の僕と作詞を担当した彼女の声はきっとあなたに届くだろう。